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デジデリオ・ダ・セッティニャーノ [1400年代 Quattrocento]


春(日中はほとんど真夏ですが)、

フィレンツェは5月音楽祭で盛り上がり、美術展もたくさん催されています。




バルジェッロ美術館では、

デジデリオ・ダ・セッティニャーノの特別展を開催中。

(2/22から。インフォメーションが遅くなりました。6/3で終了)




Desiderio da Settignano(1428, Settignano-1464, Firenze)






この人がデジデリオ。

 




といっても、

本人に似ているかどうかはあまりあてにならない、

没後約100年後のヴァザーリの「最も秀でた画家、彫刻家、建築家列伝」(1568)の挿し絵です。




デジデリオの名前には、あまり馴染みがないかも知れません。

1400年代半ば、初期ルネサンスのフィレンツェ。

ドナテッロ、アントニオ・ロッセッリーノAntonio Rossellinoらと同時代に活躍し、35歳で夭折した天才彫刻家です。

ドナテッロと共同制作したこともあり、作品はしばしば混同されてきましたが、デジデリオの優しく繊細、感性ゆたかな作風は、骨太でときに愚直、武骨なドナテッロとは好対照です。




あるいは「デジデリオ—前世への冒険」森下典子著(集英社文庫)という、風変わりなノンフィクション小説で、その名前を記憶している人もいるかも知れません。

僕も、友人から贈られたその本を読んでいる間、

いくつかの小さなシンクロニシティを体験、

この彫刻家が俄然、身近に感じられるるようになりました。

この本については有隣堂のサイト内のページ↓

http://www.yurindo.co.jp/yurin/back/388_5.html

で紹介されています。






ドゥオーモ広場の看板です。

このポスターでは不気味に見えるかも知れないけれど…。

実際は高さ33cmの可愛らしい大理石彫刻(ウィーン美術史美術館所蔵)。

幼い子供を写実的に扱った最初の芸術家とも言われています。




フィレンツェの美術館の収蔵作品はもちろん、

ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ルーブル、ウィーン、ベルリンなどから珠玉の作品26点が集められています。

もともと寡作の作家。

展示されていないのは教会に設置されている作品ぐらい。




「聖コンスタンツァ」 1400年代後半



Santa Costanza 

Louvre

彩色木彫 高さ55cm






少年キリスト 1460-1464?

Cristo Bambino

Ntional Gallery of Art, Washington,D.C.

大理石彫刻 高さ30cm






聖母子像(部分) 1460

Madonna col Bambino(detta Madonna Foulc)

Philadelphia Museum

大理石レリーフ 全体の大きさは59cm×45cm






祝福を授ける幼子イエス 1400年代半ば

Gesù Bambino benedicente

Museo Bardini,Firenze

彩色テラコッタ 高さ58cm




バルジェッロ美術館の建物は、かつて警察長官(=バルジェッロ)の本部兼公邸兼監獄兼処刑場。1865年にイタリア初の国立美術館になりました。




常設展示も必見。

マジョリカ陶器の間のメディチ磁器等の貴重なコレクションもありますが、何といってもルネサンス彫刻の名品の宝庫です。




ミケランジェロの「バッコス」Bacco、「ダヴィデ=アポロン」David-Apollo、ドナテッロとヴェッロキオの両「ダビデ」David、ポッライウオーロの小品「ヘラクレスとアンタイオス」、ジャンボローニャ「天翔るメルキュール」Mercurio Volante…などなど。

石膏デッサンを勉強したことのある人なら、ドナテッロの「聖ゲオルギウス(ジョルジョ)」やミケランジェロの「ブルータス」Bruto等のオリジナルに出会って感激するかも知れません。




彫刻は絵画に比べて「とっつきにくい分野」のようです。

3次元表現である彫刻には、遠近法の克服という重荷を背負った2次元表現の絵画に比べて、写実表現で歴史的に先行してきたという側面があります。

ルネサンスの彫刻も新しい表現に挑んだ躍動感が溢れています。




バルジェッロ美術館の常設作品をいくつか。




ドナテッロ「マルゾッコ」



Donatello (Donato di Niccolò di Betto Bardi)

Il Marzocco

ブロンズ

フィレンツェの象徴の一つ。設置されていたヴェッキオ宮殿前にはコピーが置かれています。




ドナテッロ「ニッコロ・ダ・ウッツァーノの肖像」1430-1432?



Ritratto di Niccolò da Uzzano

彩色テラコッタ 高さ46cm

ニッコロ・ダ・ウッツァーノ(1386-1433?1466?)はメディチ家の支配に反対した高潔の人物…らしいのですが、生没年も2説でてきてしまったように、詳しい事は不明。興味をひかれるので調べてみるつもりです。ご存知の方はお知らせ頂けると嬉しいです。




ドナテッロ「ダヴィデ」1425-30?



Donatello

David

(写真は“Mark Harden's Artchive”

http://artchive.com/ftp_site.htmよりコントラストを修正)

ブロンズ

武骨と書いてしまったドナテッロですが「ダヴィデ」の繊細、優美な感受性は、エロティックとも形容したくなる官能的魅力に溢れています。

ギリシャ・ローマ以降の最初の裸体彫刻とされています。




ジャンボローニャ「七面鳥」



Giambologna(Jean de Boulogne)

Il Tacchino

(figure di animali)

ブロンズ




ブルネッレスキとギベルティの「イサクの犠牲」



Filippo Brunelleschi        Lorenzo Ghiberti

Sacrificio di Isacco     Sacrificio di Isacco

ブロンズ

フィレンツェの象徴的な建物、聖ジョヴァンニ洗礼堂の扉をリニューアルするコンペ(1402年)で最後まで競った2作品。

ルネサンス美術の嚆矢として美術史で最初に語られる重要な作品です。

右の作品でコンペに勝ったギベルティはこの扉の完成のために50年を費やしました。






Lorenzo Ghiberti

Porta del Paradiso

ブロンズ、金箔

これが完成した扉。ミケランジェロが「天国の門」と称賛しました。現在洗礼堂にあるのはコピー。実物はドゥオーモ博物館にあります。




一方、負けたブルネッレスキは建築家に転身して数多くの名建築を残しました。

ドゥオーモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)のクーポラもその一つ。ミケランジェロが称賛し、ヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂のクーポラの設計の参考にした画期的な大建築です。






右奥に一部見えている茶色の屋根がドゥオーモのクーポラ。

手前左は聖ジョヴァンニ洗礼堂。




Desiderio da Settignano

La scoperta della grazia nella scultura del Rinascimento

Museo Nazionale del Bargello

via del Proconsolo, 4 - FIRENZE

22 febbraio - 3 giugno 2007

休館:第2・第4月

入場料:7Euro

Contact Firenze Musei, Tel: +39 055294883




公式ページ

http://www.desideriodasettignano2007.it/

写真はこちらから↓

http://www.desideriodasettignano2007.it/galleria.asp




ストロッツィ宮殿では「フィレンツェのセザンヌ展」も開催中。




なぜ「フィレンツェのセザンヌ」なのかと言うと、

1910年、フィレンツェ在住の二人の若いコレクターが、自らのセザンヌ、ピサロなどのコレクションを公開、イタリア初の印象派の展覧会を開催した事にちなみ、それを再現しようと言う試みなのです。




そのコレクターの一人、自ら画家でもあった

エジスト・ファッブリの自画像



Egisto Paolo Fabbri

Autoritratto




彼は成功したイタリア系アメリカ人の子息で、始めニューヨークで絵画を学び、フィレンツェに移住します。

パリで印象派の画家達に出会いピサロに師事したりして、セザンヌを知り、コレクションを始めるのです。




当時のコレクションは散逸して各地の美術館に収まっています。

それらを可能なかぎり集めて再現しています。




たとえばボストン美術館の

「赤いひじかけ椅子のセザンヌ夫人」



Madame Cézanne sulla poltrona rossa 1877

Boston




あわせてセザンヌに影響を受けたイタリアの画家達の作品も展示、近代イタリア美術におけるセザンヌの意味も再認識しようという欲張った企画。

ピサロ、メアリー・カサット、ゴッホ、マティス等の他、ロダン、メダルド・ロッソMedardo Rosso等、印象派的な、またはセザンヌ的量感の影響を受けた彫刻作品も出品されています。

こちらの展覧会は7月29日まで。




Cézanne a Firenze

due collezionisti e la mostra dell’Impressionismo nel 1910




Firenze, Palazzo Strozzi, 2 Marzo – 29 Luglio 2007

http://www.cezanneafirenze.it/






イタリアの展覧会は会期を長くとり、カタログにも力が入ります。

特に左、デジデリオはハードカバーでカタログとは思えないほど。

イタリアでもメジャーではなく文献も限られていますから貴重です。


この記事は新カテゴリー【1400年代 / Quattrocento】に移動しました。


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toraneko-tora

美術オンチの私には知らないことばかり
聖コンスタンツアの顔・・・・・下半分は、やさしそう・・でも上半分が加わるとなんか、意地悪そうな・・・・・聖人なんだから、優しい方なんでしょうが・・・・
こんなこと考えるなんて、聖人への冒涜ですよね・・・・お許しください
by toraneko-tora (2007-05-26 06:47) 

ぱふ

デジデリオと聞いて、すぐに森下典子さんの本を思い出しました。
前世がルネサンスの芸術家だなんて、羨まし~い、と思ったのを
覚えています。留学中はバルジェッドのすぐそばの
パラッツォ(の屋根裏)に住んでいました。懐かしいです★
by ぱふ (2007-05-26 07:23) 

neko

5月は音楽祭に美術祭。日本とは違った文化。
さすがにどれも芸術作品、されど一度も見たことがない作品ばかりです。
いい目の保養になりました。
by neko (2007-05-26 08:51) 

M-cubic

ありがとうございました。
日本に居ながらイタリアの空気を感じさせて戴きました。
また、寄せてください。
by M-cubic (2007-05-26 09:31) 

にこちゃん

立体の世界って、なんかリアルに人間味が伝わりますね。
天国の門・・・・リプリカしか見たことないです。
会期が長いのはいいですねー、日本の展示会等は最初激混みだったりして
その後、ゆっくり行こうとしても、終わっちゃったりするのが常で・・・
by にこちゃん (2007-05-26 11:50) 

旅爺さん

外国では沢山の美術品を見て来ましたが、殆ど素通りなので、よほど有名なものしか覚えてません。だめですね。
by 旅爺さん (2007-05-26 17:17) 

TaekoLovesParis

数日前に、さ、さっと拝見して、日曜の朝、ゆっくり見ようと楽しみにしていました。写真がきれいで説明もていねい、上等の本をめくっているかのようです。
デジリオもすばらしいけれど、私はドナテッロのダビデがとっても気に入りました。じっと眺めていました。ギベルティの50年がかりの扉はぜひ本物を見てみたいです。あのドゥオーモのクーポラの建築家は彫刻家だったんですね。いろいろなドラマを知ると作品に親近感がわきます。
東京ではモネ、フィレンツェではセザンヌですね。
ボストン美術館は何回か行っているけれど、このセザンヌは目立っていました。
by TaekoLovesParis (2007-05-27 11:41) 

yk2

聖コンスタンツァは、時間が無くてルーヴルで観たかったのに観てこられなかった作品の1つです。僕の持っているルーヴル・ガイド本では作者名が記されていなかったので、この記事読ませて頂き、「へぇ~」と感嘆の声連発でした。

彩色された木彫って、僕には平櫛田中の作品イメージがとっても強くて、一歩間違えると巨大な五月人形みたいにも思えちゃうけど(^^;、こちらはそんなにリアルじゃない分柔らかな印象ですね。彩色テラコッタになるとまたツルリとして別の印象が生まれるのも面白いです。
by yk2 (2007-05-27 12:42) 

plot

皆さま、コメントありがとうございます。
しばらくダイアルup環境なので、フィレンツェに戻ってから、ゆっくりお返事させてくださいね。
昨夜ピサ空港からウィーン入り。
SkyEuropeという寝台列車よりエコノミーな中欧系の航空会社、快適でした。
フィレンツェは昨夜から恵みの雨で気温も10℃近く下がったとか。
ウィーンは夏です。今夜はホイリゲ。
6/29からプラハに4泊。
時間があればブラティスラヴァも取材したいです。
by plot (2007-05-27 22:26) 

Ikesan

少年キリスト。。。ちょっと微妙な感じがします。理想像のようなかたちなのでしょうね。
七面鳥のブロンズは驚きです。
by Ikesan (2007-05-28 00:19) 

ツカ

聖コンスタンツァ、今にもしゃべり出しそうですね~!(笑)
目がいい、目が。
ポスター、不気味だけど実物が33cmなら観てみたい♪^^
by ツカ (2007-05-28 00:48) 

ぴい

少年時代のイエス像って初めて見た気が...
幼子イエスとニッコロは日本人的ですね〜
彫刻は美術館だとなんとなく流し見(?)しがちですが
こうして説明とともにゆっくり見るとおもしろいです。
by ぴい (2007-05-28 22:32) 

Krause

良いブログを見つけました。これからちょくちょく訪問させてください。勉強になります。
by Krause (2007-05-29 17:45) 

yume_yume

ちょっと忙しくなりすぎて、
ブログから離れて、勉強する事になりました!!
ミルコンに応募させて頂いたのに、
今、記事が見れない状態になっています。
ドタバタしていて、すみません。
また、こちらのブログにはご訪問させて貰います。
by yume_yume (2007-05-31 08:27) 

maam

やっぱり、私は彫刻など、立体の方が落ち着きますね。
自然な気がします。
どうも、立体のものを平面に表現することが苦手で、
絵は描けません…。
七面鳥、気になります。
by maam (2007-06-01 09:43) 

鈴木浩司

誰が勝者で、誰が敗者だか、、
すご過ぎてわかりません(^^)
プラハも行きたいな~
by 鈴木浩司 (2007-06-01 11:46) 

Minovsky

今日は美味しかったですね。
フィレンツェ、楽しみにしております。。
by Minovsky (2007-06-04 07:31) 

mompeli

彩色テラコッタの色合いといい質感といい、とてもいい感じです
最後の写真…このカタログの分厚さ!!
昔 「今世紀最大にして最後のベラスケス展」ってのスペインでやっていて 立ち寄ったことがあるのですが そのカタログを買ったのはいいのですが あまりに重くて帰るとき泣いた覚えがあります
by mompeli (2007-06-08 00:06) 

plot

toraneko-toraさん、
確かに難しい厳しくも感じられる表情ですね。写真ではなく実際の像に接すると「こんな人いるな」と親しみも感じられるのですが.. 。

ぱふさん、
10年ほど前、バルジェッロの近くに友人の若い画家達が屋根裏で共同生活しているぼろパラッツオがありました。どこかですれ違っていたかも知れませんね。時代違うかもしれないけれど。

nekoさん、
フィレンツェは日本で言えば京都や鎌倉のようなところですが中世から変わらない建物、街並みがそのまま残っています。これも文化の違いだと思いますが街そのものがタイムマシーンのようです。

muu+さんこんにちは。
ご訪問ありがとうございます。関心の幅が拡がりすぎて少々とりとめのないブログですがお付き合いいただけましたら嬉しいです。

にこちゃん、
彫刻や人形など、人間や動物の形をまねて作るという行為は本能的なものかも知れませんね。平面作品はイメージだけれど立体は存在ですね。


旅爺さん、コメントありがとうございます。
見過ごされがちなものに光を当てる旅爺さんのブログのファンです。

Taekoさん、
コメントありがとう。
記事にも書きましたがドナテッロには力強い=武骨という印象が強いのですが、ダヴィデでは繊細な感性を感じますね。

yk2さん、
せっかく美術館まで出かけても目的の作品が修復中だったり、貸し出し中(それも日本!だったりして)で観れない事、ありますよね。でもそれも旅の想い出の一つですね。
彫刻の彩色、パルテノン神殿もかつては極彩色だったそうですし、ミケランジェロのシステナの天井画も修復してススを落としたらポップアートのようなキッチュな色彩に驚かされました。風化し色褪せた色彩を美しいと感じるのは現代人の身勝手かも知れませんね。 (2007-05-27 12:42)

Ikesanさん、コメントありがとう。
あと数時間でお目にかかれますね! (2007-05-28 00:19)

ツカさん、聖コンスタンツァのリアリズム、その後ラファエッロが完成させた聖母像などの万人受けする優しい表情とは対照的ですが、とても印象的ですね。

ぴいさん、
中世の聖母像にはなぜか一重まぶたの東洋美人顔が多くてほっとさせられます。

Krauseさん、
ご訪問ありがとうございます。あちこち脱線しがちのブログですがお付き合いいただけましたら幸いです。

yume_yumeさん、ご連絡ありがとう。
みるこんの各賞発表、賞品の発送も遅れていてごめんなさい。
進展しましたらメールでもお知らせしますね。

maamさん、
立体作家に比べると平面作家は一種の詐欺師かも知れませんね。
現実には存在しない空間を見せようとするのですから。
七面鳥、とっても好きな彫刻です。是非実物を観てくださいね。

鈴木浩司さん、
コメントありがとう。
プラハのビヤホールでアンダー21ツゥーロン大会予選リーグで日本代表がドイツに2対1逆転勝ちする試合を観戦しました。守備の良さが印象的でした。
決勝に進めなかったのは残念。

Minovskyさん、ウィーンではお世話になりました。
7月楽しみにしています。

mompeliさん、カタログや画集、日本に持ち帰る事を考えると何も買えなくなりますね。郵送料もばか高いし。
こっちに置いておく場所を確保できれば良いのだけど。
by plot (2007-06-10 21:48) 

sacro-bosco

はじめまして。
にこちゃんのトコロから飛んできました。

デジデリオ、sacroも森下典子の小説で知りました。
以前フィレンツェに行った時は知らなくて、
全くチェックしてこなかった(…か、見ても気が付かなかった)けれど、
いつかリベンジを兼ねてイタリアに行きたいです(>ω<)♪
by sacro-bosco (2007-06-11 19:16) 

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