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ピカソのマニエリスム時代 その1 (再掲2010-05-31 18:56の記事) [1900年代 / Novecento]

picaso01.jpg

Pablo Picasso  25/10/1881 - 8/4/1973 ) 

 L'Italienne ( L'Italiana, Italian Woman )  

150 × 100mm  

( Bloch 34; Geiser 56; Cramer 8 )   

 

パブロ・ピカソ   18811025 - 197348 )  

イタリア娘 

150 × 100mm  

 

 

 

Etcing printed with tone, 1918-19, signed in pencil and numbered 17/50,printed by Ateliers André Marty, Daniel Jacomet et Cie, 

published in the deluxe edithion ob Le Tricorne, by Galerie Paul Rosenberg, Paris, 1920, on Arches laid paper...    

Sotheby's 19th & 20th Century Prints Contemporary Prints and Paintings by Japanese Artists Auction ,

 Tuesday,April,14,1992,Tokyo Prince Hotel 

 

 

エッチング、薄く原版の色合いを残した刷り、1918-19年、鉛筆による署名あり、エディション番号17/50

刷り:アトリエ アンドレ・マーティ、ダニエル・ジャコメとスィ、

出版元:ギャラリー ポール・ローゼンバーグ パリ、1920年、「三角帽子」のデラックス版より、アルシュ・レイド紙… 

サザビーズ 1920世紀と現代の版画及び日本人画家絵画オークション資料1992/4/14より

 

 生涯におよそ100,000点制作したと言われる版画の中の1点。

 

 191819年と推定される制作年は、ピカソの「キュビスム(セザンヌ的~分析的~総合的)時代」の最後期、ロシア・バレー団とともにイタリア各都市を巡った1917年の直後です。1920年頃に始まるとされるピカソの「新古典主義時代」直前のこの短い期間をピカソの「マニエリスム時代」と呼んで、後の新古典主義時代と区別する立場があります。

 

 版元のポール・ローゼンベール(英語風の発音ではローゼンバーグ)は、名前が示すようにユダヤ系フランス人画商。後の1940年、ナチスの迫害を逃れアメリカに亡命し、ニューヨークにポール・ローゼンバーグ画廊を開くことになります。この版画が納められた版画集「三角帽子」は、ピカソが舞台・衣装デザインを担当した同名のバレー(スペイン語の原題 El sombrero de tres picos;スペインの作曲家、マヌエル・デ・ファリャ・イ・マテウ作曲、バレー初演1919年ロンドン)にちなんだもの。ローゼンベールは、ピカソのキュビスムから新古典主義への作風の転換を、画商の立場から強力に支援するという役割を果たしています。

 

 ところで、この時代のピカソの何をもって「マニエリスム」と呼ぶのか?それにどんな意味があるのか?というのが今回のテーマです。

 

 同じ時代に同じ主題を描いた油彩画があります。

 

picaso02.jpg

 

Pablo Picasso 

 L'Italienne ( L'Italiana, Italian Woman )

Paris, 1919

Oil on canvas 

985 × 705mm

( Zervos III 363; M.G. 123; M.I. 146 )

Marina Picasso Collection

 

パブロ・ピカソ

イタリア娘

パリ, 1919

油彩/麻布 

985 × 705mm

マリーナ・ピカソ・コレクション

 

 

 美術史的には〈古典主義的であること〉と〈マニエリスム的であること〉とは、対照的な概念です。

 前者が「普遍的な美」を最高の価値として〈理想的な人体プロポーション〉〈水平線を基調とする明快・静的なコンポジション〉〈英雄主義的な主題〉…などを志向するのに対して、

 後者は〈異常に引き延ばされた人体〉〈対角線と螺旋の入り組んだ曖昧で不安定なコンポジション〉〈しばしば解読不能な難解な主題〉…などを特徴とする「エリート(または好事家、オタク?)のための美術」です。

 

 マニエリスムmanierisme(仏;伊=マニエリズモmanierismo;英=マニエリズムmanierism)のマニエラmanieraとは、イタリア語の「手」=マーニmaniから派生した言葉で、方法、作法、手法、所作…などと翻訳する事ができます(同じラテン語から派生した言葉に、英語のマナー、マニア、マニアック、マンネリズム…などがあります)。

 

 マニエリズモ=マニエラ+イズモ=手法主義=は

〈「自然」から学ぶよりも、自然を越えた理想美を実現した3巨匠=レオナルド、ミケランジェロ、ラファエッロ=の手法を直接模倣すべし〉

とするジョルジョ・ヴァザーリらポスト・ルネサンス世代の主張と、彼らの生きた不安で閉塞的な時代が生んだ芸術思潮です。

 代表的な画家・彫刻家・建築家は、

 ポントルモ、ロッソ・フィオレンティーノ、パルミジャニーノ、ブロンズィーノ、アルチンボルド、エル・グレコ、ベンヴェヌート・チェッリーニ、ジャンボローニャ、ジュリオ・ロマーノ、ジョルジョ・ヴァザーリ、パラディオなど。

 

 一方、17世紀フランスを中心に誕生した古典主義(クラッシシズムclassicism)、18世紀後半から19世紀の新古典主義(ネオクラッシシズムneo classicism)のお手本も、古代ギリシャ・ローマとともに同じ盛期ルネサンスの3巨匠、とりわけラファエッロですから、〈古典主義〉と〈マニエリスム〉は、共通の親から生まれた双子の関係にあると言えるかも知れません。

 

 その関係を逆から見れば、両者の共通の〈親〉であるレオナルド、ミケランジェロ、ラファエッロら盛期ルネサンス美術が、そもそも対立する要素、人間主義と神秘主義、実証主義と主知主義、自然主義と寓意主義、理想主義とペシミズム、コスモスとカオス等の要素を内包していたと言えるのかも知れません。(この項、続く)

 

※ 冒頭の版画「イタリア娘」は、目白ガッタイオーラ ドルチにて展示中です。


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