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カルロ・モッリーノ Carlo Mollino (再掲2009-02-22 07:40の記事) [1900年代 / Novecento]

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MNAF アリナーリ国立写真美術館
MNAF / MUSEO NAZIONALE ALINARI DELLA FOTOGRAFIA

カルロ・モッリーノ 裸の視線で」
という写真展が開かれています(2009/6/14まで※)

CARLO MOLLINO. A OCCHIO NUDO 
19 febbraio - 14 giugno 2009 

※  MNAFアリナーリ国立写真美術館は建物の修復中のため休館中です(2016年5月現在)。
※ 2012年より中段していた「美術史ノート」をゆるゆると再開しようとおもっているのですが、その準備運動として旧い記事を再掲しています。これも2009年の記事です。リンクが切れているところなどもあります。

「アリナーリ」は19世紀後半、フィレンツェで活躍した有名な写真家アリナーリ3兄弟、その名にちなんだ美術館です。フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ広場にあります。

 アリナーリ3兄弟は1852年にフィレンツェにイタリア初の写真館を開き、アリナーリ兄弟社 Fratelli Alinariと名付けます。
 Fratelli Alinariは今も活動を続けていて以下のサイトから(イタリアと写真に関心がある方ならきっとどこかで見た事がある)アリナーリ3兄弟の有名な写真や、写真史に残る巨匠達の名作を見る事が出来ます。

 で、ちょっと混乱しそうなのですが
「アリナーリ国立写真美術館」はそれとは別の存在です。
(両者の関係は不明ですが、どこかの鞄屋さんのような複雑な状態ではないようです)

 混乱ついでに付け加えると、フィレンツェの中心部には彼らの名をつけたアリナーリ兄弟通りLargo Fratelli Alinariという通りが存在していて、その15番地にはHotel Alinariがあるのですが、webサイト上には、そのホテルと同じ番地に
「アリナーリ兄弟写真歴史美術館」
MUSEO DI STORIA DELLA FOTOGRAFIA 'FRATELLI ALINARI'
という名の美術館が存在するという記述があります。でもこれは怪しい。
 実は、その名の美術館はかつて我が家の前の通り、ヴィーニャ・ヌオーヴァ(新葡萄畑)通りの50番地ルチェッライ宮に存在していました。
Via della Vigna Nuova 50, Palazzo Rucellai

 展覧会の初日MNAFで、そのかつて存在していた「アリナーリ兄弟写真歴史美術館」についてたずねると「ヴィーニャ・ヌオーヴァ通りにあったけれど、10年前に閉鎖して、3年前にここをオープンした」とのこと。つまりMNAFに改名して移転した。
 あるいは閉鎖した10年前から新美術館が開館するまでの8年間、
Hotel Alinariと同じ建物に間借りしていたのか?
 いつかその疑問を解明したいと思います。

 前置きが長くなりました。

…と、長い前置きをゴチャゴチャ書いてしまった後で
Fratelli Alinariのページを読んでみたら
「アリナーリ兄弟写真歴史美術館」のコレクションは、
アリナーリ財団が運営するMNAFに移管された…
みたいなことが書いてありました。
 で、疑問はあっさり解決。
 ところで同じFratelli Alinariのサイトのバーチャルツアーを覗いてみると、図書館みたいな建物の各階に写真史を概観出来る施設などが紹介されています。その建物の構造は新美術館とは全然別物。
 あるいはこんな立派な施設が前述の番地に今も存在してるのか?
 それとも建物のイメージ自体がバーチャル?
 またゴチャゴチャしてきたので、この位で本題に入ります。


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MNAFの入っている建物。
開廊は「サンパオロのロッジャ」Loggia di San Paolo。
サンティッシマ・アンヌンツィアータ広場にあるブルネッレスキ設計の捨て子養育院と良く似ていますが、こちらは駅近くのサンタ・マリア・ノヴェッラ広場。
1563年から19世紀半ばまで馬車レースが催されていた由緒ある広場ですが、修復工事中で見苦しい状態です。


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MNAFの入口
入場料は6ユーロ。

モッリーノの展覧会はエントランスからすぐ始まっていますが、
その奥の常設展示も素晴らしい。
写真史を飾る名作のオリジナルプリントが集められています。
門外漢の僕でもどこかで聞きかじった名前を挙げると

↑それぞれの作品はリンク先をご覧ください。

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美術館のカタログです。一眼レフのコレクションの一部。
Nikomart FT2, Pentax ME Super, Minolta SR-T 101, Cannon FTb...
日本のカメラは他にNikon F, ASAHI Pentax SV, Olympus XA3
などが展示されています。

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左がモッリーノの写真展のカタログ。右端はMNAFのカタログ。
中央は‘Carlo Mollino arabeschi’「カルロ・モッリーノ-アラベスキ※」という本。
2006/9/20〜2007/1/7までトリノのGAM近現代美術館で開催された同名の展覧会のカタログです。
我が家の近所にある新刊本が半額のアウトレット本屋で見つけて、カルロ・モッリーノの名前を知るきっかけになった本です。この先の画像はこの本のページを複写したものです。
本の内容は↓こちらのサイトで少し見る事が出来ます。
http://www.archimagazine.com/amollino.htm(註:2016現在リンクできません)

※アラベスクの複数形。アラベスクにはエキゾチックで入り組んだ、ゴチャゴチャのいたずら描き…と言うニュアンスがあります。

展覧会はカルロ・モッリーノの写真作品のみが展示されています。写真美術館ですからそれも当然なのですが、カルロ・モッリーノは実はとても多彩な仕事をしています。
ここでは彼の写真以外の仕事をご紹介します。

もちろん写真も面白かったです。写真をご紹介する代わりに展覧会とほぼ同じ内容の写真集のサイトにリンクしておきます↓


↑サイトに飛んで、このボタンを押すと写真集の内容が少し見られます。

さて、ここからやっと本題です。

カルロ・モッリーノは1905年、トリノに生まれます。

Carlo Mollino (1905 Torino-1973 Torino)
画像のみになりますが以下のピンタレストのページでも紹介しています。


以下で紹介する作品はこの展覧会には出品されていません。念のため。

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愛用したポラロイドカメラ。

本格的に写真に取り組んだのは後半生、1950年代後半です。

キャリアのスタートは建築、そして彼が自身の最重要な分野と考えていたのも建築です。
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ロープウェー・ステーションの模型、2005年、マイアミ建築大学で制作されたもの。
オリジナル・スケッチは1944年。

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デスク 1951年 パリ ポンピドー・センター収蔵
このデスクは近年リプロダクツされています。
モッリーノのオリジナル家具の多くは顧客の建築に合わせた一品制作だったため、オークションで驚くほど高額で取引されています。

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テーブル 1949年

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テーブル 1950年

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左1947年、右1948年

モッリーノの関心は境界を軽々と越えていきます。

スキーは彼が終生愛したスポーツです。

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彼自身の著書、スキー技術の理論書‘Introduzione al Discesismo’(滑降概論)の挿し絵 1950年

飛行機の操縦も重要な趣味でした。

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アクロバット飛行機プロジェクト 1962年

前掲の家具の軽量構造も飛行機がヒントになっているかも知れません。

そしてもちろん自動車も
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スケッチ 1954年

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スケッチ 1954年

長い記事になってしまいましたが、ようやく冒頭の赤い車に辿り着きました。
車の名はナルディ・ビシルーロ Nardi Bisiluro
1955年のモッリーノの作品です。
ナルディはレーシング・ドライバー、エンリコ・ナルディ Enrico Nardi(1907-1966)が、レナート・ダネーゼ Renato Daneseとともに1947年に創始した会社です。
クラシックなウッドリム・ステアリングホイールで有名ですが、当初はレーシングスポーツカーを開発制作、ミッレ・ミリアなどで好成績を上げていました。この車も1955年のル・マンを目標に開発されたレーシングスポーツです。
車名のビシルーロ Bisiluro、biはラテン語語源の「2」を表す接頭辞(bicicletta ビチクレッタ=2輪車=自転車、biennale ビエンナーレ=2年に一度=隔年の、biscotto ビスコット=2度焼かれた=ビスケット etc...)。 siluroは魚雷。つまり双胴魚雷という意味になります。


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構造図 1955年

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スケッチ 1955年
構造図にも見られる空気抵抗を利用した補助ブレーキに注目。実車には最終的には搭載されませんでしたが、期せずして、同じ年の同じレース、ル・マン24時間を目標に開発されたメルセデス300SLRのエアブレーキと同じアイディアです。
あの大惨事のル・マンがこの車にとって最初で最後のレースとなったのです。

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右の‘魚雷’操縦席に座るモッリーノ 1955年
左の魚雷には4気筒エンジン=FIAT 1100をベースにエンジンチューナー、ジャンニーニがストロークを切り詰めツインカム化した735cc=とトランスミッション、デフなどが収まります。ル・マンのレギュレーションでは2座席が義務づけられていたので、レギュレーション・シートが中央、フューエル・タンクの後方に設置される事になっていました(この写真では見当たりませんが構造図にはアウトラインが見えます)。 

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深海生物にも見える‘双胴魚雷’の面構え。siluroには‘電気ナマズ’という意味もあります。


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完成車で450kgという軽量でした。

↓こちらのサイトにもいくつか写真があります。


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ル・マンでのスナップ。ポルシェと比較すると前面投影面積の小ささが想像出来ます。
レース結果は開始3時間目、ジャガーDタイプの後流(高速で移動する車両の後方に出来る空気の渦流 、航空機の巻き起こす後方乱気流と同様のもの)に巻き込まれ、コースを飛び出しリタイア。同じジャガーが引き起こした大惨事の1時間後のことです。現在は修復されミラノの国立レオナルド・ダ・ヴィンチ科学博物館に収蔵されています。

モッリーノと彼の双胴魚雷についてのお話は以上です。

ここからはおまけまたは脱線情報。

モッリーノ以外にも双胴魚雷型に執着した人物はいます。
2年後、モンザサーキットに彼自身のBisiluroに乗って表れたピエロ・タルッフィ Piero Taruffiもその一人。

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双胴魚雷があるなら‘一本魚雷’があっても良いはず。

ちゃんとあります。


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Vespa Siluro 1951年
同年2月9日、ディーノ・マッツォンチーニ Dino Mazzonciniがスクーター世界速度記録を樹立したヴェスパ・シルーロ。
ローマ〜オスティアの公道上で往路174,418 km/h、復路167,910 km/h、平均171,102 km/h。


脱線ついでにモッリーノの本に出会って、
積年の疑問が解決したことに触れておきます。

↓ビシルーロ制作中の写真ですが
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この写真のキャプションには
R.Motto profila la carozzeria del Bisiluro. 1955.
「R・モットがビシルーロの車体の側面を形作っている」とあります。

3年前、見た事のない小粋なバルケッタに出会いました。
分かっているのはモット・トリーノMottoTrinoという名前だけ。
50〜70年代にかけて多くのカロッツェリアが活躍していた、カーデザインのメッカ、トリノの小さなカロッツェリアの作品と推測したのですが、決め手がありませんでした。

モッリーノの本でR.Mottoという名前に出会って、かつてモットという名のカロッツェリア(車体工房)が存在していたことが分ったという訳です。モットは小規模ながら高い技術を持つカロッツエリアだったようです。ビシルーロにも当時の最先端技術、マルチチューブラー(多鋼管)フレームが採用されていますし、ビシルーロ以前からナルディとは協力関係にありました。

カロッツェリア モットの作品はピンタレストのページで⇩

Yoici/Pinterrest a005 Carrozzeria Motto


↓3年前の記事はこちらですがモット・トリーノの写真も再掲載しておきます。

マエストリとモット・トリーノ

再会!MottoTorino

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手前がモット・トリーノ

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奥の車です。

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傍らに立つのは、この車のオーナーで有名なオーダー紳士靴工房を主催するステファノ・ベーメル氏


MUSEO NAZIONALE ALINARI DELLA FOTOGRAFIA

nformazioni e Prenotazioni 
Tel. +39055216310
Fax +390552646990
E-mail: mnaf@alinari.it
 

ORARIO: 10 - 19
Chiuso il mercoledì 
La biglietteria chiude 30 minuti prima della chiusura


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