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渦巻く!! ティントレット / Il turbine del Tintoretto (再掲2008-09-08の記事) [1500年代 Cinquecento]

LAnnunciazione1.jpg
L'annunciazione / Tintoretto
Scuola Grande di San Rocco, Venezia
受胎告知 / ティントレット
サン・ロッコ同信会館 ヴェネツィア
542 × 440 cm/油彩 麻布

この絵の主題は

もちろん「受胎告知」なのだけれど…

「受胎告知」というのは新約聖書 (例えば「ルカによる福音書」) などに記述されているエピソードで、処女マリアの前に大天使ガブリエルが降臨し、聖霊による神の子の受胎を告げるという場面です。

 マリアからすれば大きな翼の大天使ガブリエルが現れるところで最初の「びっくり」、ガブリエルが告げた内容に、さらに2つびっくり」というわけです。
ガブリエルが告げた2つのびっくりとは、お察しのこととは存じますが、
その1
「おめでとう!君、受胎してます
「うそー!何にもイケナイ事してないのに!」

その2
「だ、誰が、私にナニをしたって言うのよ?」
「か、神様が..
「ひょえー!?」

の2つ。

 大天使ガブリエルの立場からすると、うら若きおとめマリアに衝撃的な事実を冷静に受け止めてもらうのが第一で、いらぬ恐怖感を与えるなどもってのほか。失神でもされては目も当てられません。

でも、

この画面上部に浮んでいる 連凧みたいな物体は何?

大天使ガブリエルの背景に小さな天使が飛び回っている…
と言う構図は他にもありますが(カルロ・クリヴェリ、ティツィアーノなど)、
連凧天使というのはティントレットの発明です。
大天使ガブリエル親分からして 疾風のごとく突っ込んでくる 上に、連凧天使 です。
これでは「おどかしに来た」と言われても仕方ありません。

でもとにかく、ティントレットがこの画面の中で最も時間をかけ、力を入れて描いているのは
マリアでもガブリエルでもなく 連凧天使 です。

ティントレットが本当に描きたかったのは「受胎告知」という厳粛な主題でも何でもなく、連凧天使たちが巻き起こす、破壊的な渦巻き だったのではないでしょうか

…というのが今回のテーマです。

「渦巻き」がどこにあるかって?

こんなふうにコントラストを強調すると
よりはっきり見えてくるかも。

image.jpeg

モノクロにして階調を反転させるとこんな感じ。
composizione00.jpg


Tintoretto,Jacopo; Il  Tintoretto
 ( Jacopo Comin ; 29/09/1518 Venezia - 31/09/1594 Venezia) 
ヤコポ・ティントレットまたはイル・ティントレット。本名はヤコポ・コミン。「本名はヤコポ・ロブスキ Jacopo Robusti」とされている場合もありますがロブスキはrobusto=頑丈な=と言う意味のあだ名で、幼名と考えられています。

 12才でティツィアーノの工房で働き始めますが(カルロ・リドルフィCarlo Ridolfi -ティントレット本人に会ったことはなく息子のドメニコからの情報を元に評伝を書き上げた-に因れば「巨匠の嫉妬により」)10日後、そこを飛び出します。当時40歳前後で働き盛りのティツィアーノが12才の少年に嫉妬…というのは眉唾です。尤も、早熟だったのは確かで、21歳で‘マエストロ’の資格を得ています。
 この作品も含め、サン・ロッコ同信会館の作品群は脂が乗り切った46歳の時の仕事です。

 有名なスローガン「ティツィアーノの色彩とミケランジェロの形態」は、ティントレット自身の言葉という確証はないようですが、彼の作品の特徴を良く表しています。色彩も形態も両巨匠には及ばなかったという評価もありますが。しかし何よりもティントレットはバロックの先駆けとして評価されるべき作家です。

 エッチな主題(次回以降でご紹介予定)で本領発揮というところはティツィアーノにも通じる人間臭さというか、イタリアの中でも最もエッチなヴェネツィア人(私見です)の面目躍如というところ。
 一方、ティントレットが生み出した壮大な空間と圧倒的なムーブマンには(現代人の衰弱した感性には「こけおどかし」に感じられるとしても)続くバロック芸術も顔色を失う「純粋な驚異」とも言うべき一種の真摯さがあります。
「一種の」とことわったのはそれが「芸術的真摯さ」とは、ほんの少しだけ(でも決定的に)ずれていると感じてしまうからです。彼の関心は見事に「造形」そのものに特化していて、描かれる者の人間性などには目もくれないというところがあります(エッチな主題の場合を除く)。そういうところは少しセザンヌ的(つまり近代的)と言えるかも知れません。
 思うに、ティントレットは生まれてくるのが少しだけ、ほんの400年ほど早過ぎたのかも知れません。彼が現代に生きていたら画家ではなく映画監督になって、スピルバーグやテリー・ギリアムのライバルになっていたような気がするのです。
Scusami, Jacopo!

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